「イタッ!腕を動かすと肩が痛い…」
40代以上の方に見られる身体の症状の一つに「肩の痛み」があります。
肩の痛みの代表的なものは「五十肩(ごじゅうかた)」です。
また、肩に次ぎ、スポーツをしている方に多いのが「野球肘」「テニス肘」「離断性骨軟骨炎(外側型野球肘)」です。
今回は、肩・肘の痛みの中でも特に多い「五十肩」、および、「野球肘」「テニス肘」「離断性骨軟骨炎(外側型野球肘)」の症状と原因、治療方法についてご説明します。
目次
■五十肩
五十肩(肩関節周囲炎)とは、肩の関節が痛む疾患です。四十肩と呼ぶこともあります。40~50代以降に発症するケースが多く、このような名前がつけられています。
[症状]
腕を持ち上げたり、腕を外側に開く動作をしたときに痛みを感じることが多いです。症状が進むと腕を動かしていない安静時(睡眠中など)にも肩が強く痛むことがあります。
五十肩になると肩の痛みが原因で「腕を水平に保てない」「肩より上に腕を挙げられない」「背中のファスナーを閉められない」「横向きに寝られない」などの症状が見られます。
[原因]
五十肩の主な原因は加齢とされています(※)。
(※)加齢以外でも肩が痛むことがあり、はっきり
とした発症原因は解明されていません。
年齢を重ねると共に、肩周りの筋肉や腱の柔軟性は少しずつ失われていきます。
加齢により、肩周りの柔軟性が失われて組織が硬くなると肩関節の「腱板」とソケット部分の「関節包」がこすれ合ってしまい、炎症が起きて痛みが発生します。
[治療方法]
五十肩は症状の重さに合わせて治療を行います。五十肩の治療で主に行われるのは以下の3つです。
①リハビリ
痛みはあるものの、ある程度は肩を動かせる、肩を挙げられる場合はリハビリ(運動療法)を中心とした治療を進めていきます。
リハビリは医師の監修のもと、肩のストレッチや振り子運動など、理学療法士がそれぞれの患者様に合った運動療法のメニューを組みます。肩関節の緊張を緩和し、可動域を広げるのがリハビリの主な目的です。
②炎症を鎮めるための注射、内服
肩の痛みが強く「寝られない」「痛みが強く何も手につかない」など、日常生活に支障がでる場合は炎症を鎮めるためのステロイド注射や痛み止め(消炎鎮痛剤)の内服による治療を行います。
③手術
肩の腱板や関節包が癒着して硬くなってしまい、痛みが治まらない場合は手術を検討します。五十肩の主な手術には内視鏡下で行う関節鏡下受動術があります(※)。
(※)手術が必要な場合は提携病院をご紹介いたします。
■野球肘、テニス肘
<野球肘>
野球肘とは、野球の「投げる動作」により生じる肘の障害です。障害の部位により、内側型・外側型・後方型に分類されます。
<テニス肘>
テニス肘とは、テニスの「ラケットを振る動作」により生じる肘の障害です。障害の部位により、バックハンド型・フォアハンド型に分類されます。
[症状]
野球肘、テニス肘の主な症状としては、野球肘では投げる動作をしたとき、テニス肘ではラケットを振る動作(ストローク動作)をしたときに肘の内側や外側が痛むことがあります。
スポーツ以外の場面でも、日常生活で「ドアノブを回す」「蛇口をひねる」「ぞうきんやタオルを絞る」などの手首の動作をしたときに肘の内側や外側が痛むことがあります。
[原因]
野球肘、テニス肘、共に主な原因はスポーツによる肘の使い過ぎです。
野球の投球動作やテニスのラケットを振る動作を過度に行うと肘関節の軟骨、靭帯、腱、骨膜や肘周りの筋肉が損傷して炎症を起こし、痛みが発生しやすくなります。
スポーツのほか、加齢によって肘周りの筋肉が硬くなり肘が痛むケースもあります。
[治療方法]
野球肘、テニス肘は肘の状態に合わせて治療を行います。重要な点は、まずは原因となるスポーツを休み、安静を保つことです。
①安静
野球肘、テニス肘の原因になるスポーツを休み、安静を保ちます。
安静時には肘の可動域を制限するサポーターを装着し、患部に与える刺激をやわらげる場合もあります。
②リハビリ、物理療法
肘の安静後は様子を見てリハビリや物理療法を行います。
リハビリでは可動域を広げるストレッチや肘周りの筋力を強化する筋肉トレーニングを主に行います。
物理療法では温熱療法、電気治療、超音波療法などを行い、肘の症状の緩和と組織の回復を促す治療を進めていきます。
③炎症を鎮めるための注射、内服
肘の痛みが強く日常生活に支障がでる、または、大会などの事情によりどうしてもスポーツを休めない場合には、炎症を鎮めるためのステロイド注射や痛み止め(消炎鎮痛剤)の内服による治療を行います。
④手術
肘関節の軟骨がはがれ落ちる、肘の腱や筋肉が断裂している、または、肘の痛みが治まらない場合は手術を検討します。
野球肘、テニス肘の手術は内視鏡下で行う肘関節鏡視下手術や断裂した腱・筋肉を縫合する肘関節外手術などがあります(※)。
(※)手術が必要な場合は提携病院をご紹介いたします。
■離断性骨軟骨炎(外側型野球肘)
離断性骨軟骨炎(りだんせいこつなんこつえん)とは、肘関節の外側にある軟骨がはがれてしまう疾患です。主に肘関節や膝関節に起こります。
[症状]
軟骨がはがれ始める初期段階では、運動時に肘に違和感や不快感、鈍痛を感じることがあります。症状が進んで軟骨のはがれが大きくなると、痛みが強くなることが多いです。
重度になると軟骨が完全にはがれ落ち、肘関節の中に軟骨が遊離した状態になります。遊離した軟骨を関節ねずみ(ねずみ)と呼びます。
軟骨が遊離した状態になると肘を曲げ伸ばしする際にひっかかる・ずれる感覚が生じ、肘の痛みを感じやすくなります。はがれ落ちた軟骨が肘関節に挟まり、肘がロックされて動かなくなってしまうケースもあります(=肘関節のロッキング)。
[原因]
離断性骨軟骨炎の主な原因はスポーツによる肘の使い過ぎです。特に野球のピッチング動作の繰り返しが発症につながることが多いため、一般的には「野球肘(外側型野球肘)」と呼ばれています(※)。
(※)前述の肘の組織の炎症を含め、野球で起きる
肘の障害・疾患全般を「野球肘」と呼びます
前述の組織の炎症による野球肘は肘関節の内側に起きやすく(内側型野球肘)、離断性骨軟骨炎による野球肘は肘関節の外側に生じやすいです(外側型野球肘)。
野球以外にも、テニス、体操、水泳などの投球動作を行わないスポーツでも肘の曲げ伸ばし動作を繰り返すことにより離断性骨軟骨炎を発症するケースがあります。
{離断性骨軟骨炎は10~17歳頃の成長期に発症しやすい}
離断性骨軟骨炎は10~17歳頃の成長期の子どもに多く見られます。成長期の子どもが離断性骨軟骨炎を発症しやすい理由ははっきりとは分かっていません。成長期の子どもは組織が未成熟で軟骨がはがれ落ちやすいことや、遺伝が関係していると考えられています。
[治療方法]
離断性骨軟骨炎は症状の重さに合わせて治療を行います。重要な点は、まずは原因となるスポーツを休み、安静を保つことです。
①安静
肘の軟骨の一部は浮き上がっているものの、まだ軟骨がはがれていない初期段階では安静による保存的治療を行います。野球が原因の場合はまず投球動作を禁止し、肘に負担がかかる一切の動作を制限します。
安静期間中は肘に負担をかけないようにすることが大切です。具体的には、症状がある腕をなるべく使わない(箸と鉛筆以外は持たない)、利き手を変える(必要がある場合)、野球からのスポーツ種目の変更を行う(必要がある場合)、などにより患部の安静を保ちます。
安静期間は肘の状態によって異なります。6~8ヶ月間程度の安静で軟骨がくっつくケースもあれば、1年以上の安静が必要になることもあります。
②リハビリ
安静と並行してマッサージやストレッチによるリハビリを行うことで肘周りの筋肉の緊張をほぐし、血行を促進させて組織の回復につなげます。リハビリにより、肘に負担がかかりにくい腕の動かし方を身につけやすくなるメリットもあります。
③手術
以下のケースでは手術を検討します。
・安静やリハビリによる保存的治療を行っても肘の痛みが治まらず、生活に支障が出ている
・肘の軟骨が完全にはがれ落ちている
・スポーツへの復帰を希望する(なるべく早くスポーツに復帰したい、スポーツを休みたくない・辞めたくない)
離断性骨軟骨炎の主な手術には骨軟骨片摘出術、骨穿孔術(ドリリング)、骨釘固定術、骨軟骨柱移植があります(※)。
(※)手術が必要な場合は提携病院をご紹介いたします。
【症状に合わせ、適切な治療方法をご提案します】
今回は肩・肘の疾患の中で特に多い「五十肩」「野球肘」「離断性骨軟骨炎(外側型野球肘)」「テニス肘」についてお話をさせていただきました。
お伝えした以外にも肩や肘にはさまざまな疾患があります。スポーツをしている方に多い以下の疾患については、また別の機会にブログにて解説します。
肩の疾患
・野球肩
・リトルリーガーズ・ショルダー
・投球障害肩(肩峰下滑液包炎、腱板炎、腱板損傷、関節唇損傷、インピンジメント症候群)
肘の疾患
・ゴルフ肘(上腕骨内側上顆炎)
たけだクリニックでは患者様の症状に合わせ、医師が適切な治療方法をご提案いたします。
「肩が痛く、腕を挙げられない」
「野球・テニスをしており、肘が痛む」
など、肩や肘の違和感・痛みがある場合は当院までご相談ください。