部活動を行う成長期のお子さんに多いのがスポーツ障害です。スポーツ障害とは、スポーツや格闘技によってひきおこされる慢性的な身体機能の障害を指します。
スポーツによるケガをスポーツ外傷と呼び、スポーツ外傷による症状が慢性化したものがスポーツ障害になります。
捻挫などの比較的軽いものから、靭帯、腱、筋肉の損傷・断裂などの重いものまで、スポーツ障害にはさまざまな種類があります。
今回はスポーツ障害について、障害の原因と種類、予防方法をご説明します。
目次
■スポーツ障害をひきおこす原因
以下のような要素がある場合、スポーツ障害を発症しやすくなります。
1.繰り返しの動作による身体の使い過ぎ(オーバーユース)
スポーツ障害をひきおこすもっとも大きな原因は繰り返しの動作による身体の使い過ぎ(オーバーユース)です。
野球の投球動作やテニスのラケットを振る動作、ひざの曲げ伸ばしなど、スポーツや格闘技で一定の動作を繰り返すことによりスポーツ障害を発症することがあります。
2.間違った・偏った身体の使い方
利き手・利き足ばかりで動作する、足の痛みや腰の痛みをかばうために変な動作をする、などの間違った・偏った身体の使い方はスポーツ障害をひきおこす原因の一つです。身体のバランスが崩れて特定の箇所に負荷がかかってしまい、スポーツ障害を発症しやすくなります。
3.身体の柔軟性の不足
身体の柔軟性が不足していると靭帯や腱、筋肉、関節の可動域が狭まってしまいます。柔軟性の不足により広い範囲で衝撃を受け止めにくくなり、スポーツ障害を発症しやすくなります。
4.骨の伸びに身体の組織の成長が追い付かない
骨が伸びているのに靭帯や腱、筋肉の成長が追い付かない現象は成長期(10~18歳頃)のお子さんに多く見られます。
骨の伸びに対して身体の組織の成長が追い付かないことに加え、成長期に行うスポーツや格闘技によるオーバーユースなどの要因があると以下のようなスポーツ障害を発症しやすくなります。
・骨の成長により、靭帯や腱が過度に伸びて損傷する
・筋肉に引っ張られ、成長段階にある未成熟な骨が損傷する(剥離骨折など)
■身体の部位別:部活生に多いスポーツ障害の種類
10~18歳頃の成長期の部活生のお子さんに多いスポーツ障害は以下のようなものがあります。
〇ひざのスポーツ障害
・原因となる動作:ひざの曲げ伸ばし、ジャンプ、急停止、ターンなど
・スポーツの種類:サッカー、テニス、バスケットボール、柔道など全般
ひざのスポーツ障害で起きる疾患には主に以下があります。
オスグッド・シュラッター病、ジャンパー膝、サッカー膝、ランナー膝、分裂膝蓋骨、離断性骨軟骨炎、腸脛靭帯炎、鵞足炎など
スポーツや格闘技でひざを使い過ぎている、または、ジャンプの際の着地の衝撃によりひざのスポーツ障害がひきおこされるケースが多いです。
〇肘のスポーツ障害
・原因となる動作:投球、ラケットを振る、ひじの曲げ伸ばし、手をつくことによるひじへの衝撃など
・スポーツの種類:野球、テニス、ゴルフ、体操、水泳など
ひじのスポーツ障害で起きる疾患には主に以下があります。
野球肘(内側型野球肘、離断性骨軟骨炎(外側型野球肘))、テニス肘(上腕骨外側上顆炎)、ゴルフ肘(上腕骨内側上顆炎)など
主に野球の投球動作のほか、テニスのラケットを振る動作、ゴルフのスイング動作などによりひじのスポーツ障害がひきおこされることがあります。
〇肩のスポーツ障害
・原因となる動作:投球、振りかぶる、腕を振る、重い物を持ち上げるなど
・スポーツの種類:野球、テニス、体操、柔道、ウエイトリフティング、レスリング、柔道など
肩のスポーツ障害で起きる疾患には主に以下があります。
野球肩・投球障害肩(リトルリーガーズ・ショルダーなど)、肩峰下滑液包炎、腱板炎、腱板損傷、関節唇損傷、インピンジメント症候群など(※)
(※)肩関節に起きるスポーツ障害の総称を「野球肩」と呼ぶこともあります。
主に野球の投球動作や重い物を持ち上げる動作などにより、肩のスポーツ障害がひきおこされやすいです。原因となる動作のほか、肩関節や背骨がゆがんでいる場合も関節内で軟骨や靭帯がこすれ合いやすく、肩のスポーツ障害を発症することがあります。
野球肩と総称されるほど野球に多い肩のスポーツ障害ですが、テニスややり投げなど、「振りかぶる動作」や「腕を振る動作」を行うスポーツでも肩のスポーツ障害を発症しやすいです。ウェイトリフティングや柔道、レスリングなど、肩に強い力がかかる競技も肩のスポーツ障害をひきおこすことがあります。
〇腰のスポーツ障害
・原因となる動作:背中をそらす、ジャンプ、重い物を持ち上げるなど
・スポーツの種類:野球、サッカー、ラグビー、バスケットボール、ハンドボール、柔道、体操、ウェイトリフティングなど全般
腰のスポーツ障害で起きる疾患には主に以下があります。
腰椎分離症・分離すべり症、椎間板ヘルニア、梨状筋症候群など
主に背中をそらす動作やジャンプ、重い物を持ち上げる動作などにより腰のスポーツ障害がひきおこされることがあります。
〇足(すね・足首・かかと)のスポーツ障害
・原因となる動作:走る、歩く、ジャンプ、しゃがむ、アキレス腱を伸ばすなど
・スポーツの種類:陸上(スプリント競技)、野球、サッカー、ラグビー、バスケットボール、ハンドボール、柔道、体操など全般
足(すね・足首・かかと)のスポーツ障害で起きる疾患には主に以下があります。
すねの疲労骨折(中足骨、脛骨)、シンスプリント、アキレス腱炎、有痛性外脛骨、三角骨障害、足底筋膜炎、踵骨骨端症など
主に走る・歩く動作やジャンプ、しゃがむ動作などにより足のスポーツ障害がひきおこされることがあります。骨の成長に靭帯や腱、筋肉の成長が追い付かず、すね・足首・かかとのスポーツ障害を発症するケースも多いです。
■スポーツ障害を予防する方法
①運動前・後のウォームアップ(ストレッチ)やアイシング
成長期の部活生に多いスポーツ障害を予防するには、運動前のウォームアップと運動後のクールダウンが重要です。具体的には、運動前・後に行うストレッチ(静的・動的)や運動後のアイシングなどがあります。
②適度な練習をする(身体の特定の部位を使い過ぎない)
スポーツ障害を起こす主な原因は繰り返しの動作による身体の使い過ぎ(オーバーユース)です。
スポーツや格闘技を行う際はオーバーユースにならない程度に適度に練習をすることでスポーツ障害を防ぎやすくなります。
③適切な身体の動かし方を身につける
間違った動作は身体の特定の部位に負荷が偏ってしまい、スポーツ障害を発症しやすくなります。
スポーツや格闘技を行う際は正しい指導を行える指導者の下で適切な身体の動かし方を身につけることが大切です。
④身体に異変がある場合は原因となる動作をしない、スポーツや格闘技を休む
肘やひざ、肩、腰、足の違和感、痛みなど、身体に異変がある場合は原因となる動作を止め、スポーツや格闘技を休むことが大切です。
異変が起きた部位の安静を保つことでスポーツ障害の進行を防ぎやすくなります。
⑤できるだけ早めに整形外科を受診する
スポーツ障害の可能性がある場合は痛みや症状をひき起こす原因となる動作を中止して患部の安静を保ち、併せて、整形外科で診察を受けることが重要です。整形外科では外用薬・内服薬、物理療法などの治療で痛みや症状の緩和を目指します。また、整形外科で指導する運動療法によって関節の可動域が広がることで怪我をしにくい身体の使い方を身につけやすくなります。
【気になる身体の症状があるときは当院までご相談ください】
当院ではスポーツ障害の予防・改善のため、以下の治療を行っています。
・運動療法
リハビリによって身体の一部や全身を動かし、症状の軽減、および、機能の回復を目指します。
リハビリでは医師の監修に基づき、理学療法士がそれぞれの患者様に合ったメニューを作成し、ストレッチや運動方法を指導いたします。
・物理療法
温熱、機械的、電磁気などの物理的な方法で症状の軽減、および、痛みの回復をうながします。
・再生医療
PFC-FD療法
患者様の血液から作られたPFC-FD製剤を肘やひざの関節内に注入し、関節、筋肉、靭帯、腱、軟骨などの損傷した組織の回復をうながす再生医療です。
患者様ご自身の血液を少量(50mlほど)採取し、血小板が分泌する成長因子のみを抽出・活性化させた自己血小板由来成分の濃縮物(PFC)をフリーズドライした製剤(PFC-FD)を利用します。
PFC-FD療法は自由診療になります。PFC-FD療法について詳しくは当院HPをご参照ください。
≪高性能MRIによる検査を行っています≫
当院ではレントゲンに加え、高性能MRI(超電導タイプ:1.5T)による検査を行っています。
高性能MRIにより体内に含まれる水素を測定することでスポーツ障害で起きる身体の損傷や患部の状態を把握でき、患者様に合った適切な治療を進めやすくなります(※)。
(※)MRIは靭帯、腱、筋肉などの水分や脂肪を含む組織が検査対象です。
水分や脂肪を含まない骨(皮質骨)はCTやレントゲンによる検査を行います。
「野球のピッチング動作をするときに肘や肩が痛む」
「肩の痛みが治らない」
「ひざや足首に慢性的な痛みがある」
など、身体の違和感や痛みがあるときは当院までご相談ください。医師が患者様のお悩みをお伺いした上で検査を行い、それぞれの方に合った治療方法をご提案させていただきます。