10~20歳頃の成長期の部活生に多いのがひざ・すねの疾患です。
今回は、スポーツを行うお子さんによく見られる以下の3つのひざ・すねの疾患について症状・原因・治療方法をご説明します。
・オスグッド・シュラッター病
・シンスプリント
・ジャンパー膝
目次
■オスグッド・シュラッター病
オスグッド・シュラッター病は成長期特有の疾患の一つです。骨の成長に筋肉の成長が追い付かずひざのお皿の下にある脛骨結節が炎症を起こしたり、腱によって引っ張られた軟骨がはがれてしまうことがあります。
[症状]
炎症により、ひざの前部と下部のあたりに熱っぽさや痛みを感じることがあります。軟骨がはがれた場合はひざの下部に強い痛みを感じ、患部を押すとさらに強く痛みます。軟骨がはがれると脛骨前面に骨の隆起ができ、ひざの下部が膨らむことがあります。
ひざのお皿の下付近が痛むため成長痛と勘違いしてしまい、疾患を見逃しやすいです。
[原因]
主な原因は走る、ジャンプするなど、スポーツによるひざの曲げ伸ばしの繰り返しです(ひざの使い過ぎ=オーバーユース)。
10~15歳頃で成長期にあり、サッカー、バスケットボールなど、走る、ジャンプするスポーツを行っている子どもに起こりやすいです。
■シンスプリント
シンスプリントは脛骨(すね)の内側の骨膜が炎症を起こす疾患です。脛骨過労性骨膜疾患とも呼ばれます。
[症状]
脛骨の内側の骨膜の炎症により、すねにズキズキとした痛みを感じることがあります。運動時や運動後、すねの内側(中央から足首にかけた部分)に痛みを感じやすいです。
痛む箇所により、すねの前部外側に痛みが出る前外側型(前脛骨筋、腓骨筋)とすねの後部内側に痛みが出る後内側型(後脛骨筋、ヒラメ筋)に分類されます。
[原因]
主な原因は走る、ジャンプするなど、スポーツにより繰り返しかかるすねへの衝撃です(走り過ぎ、飛び過ぎ=オーバーユース)。副次的な原因には硬い地面や道路で運動する、靴が合わずすねへ負荷がかかりやすい状態になっている、疲労が溜まっている、などがあります。
走る機会が多い中・長距離ランナーやサッカー、バスケットボールなどのスポーツによく見られます。特に激しい運動を始めたばかりの新入生の頃や休息後のシーズン初めにシンスプリントが起きやすいです。
■ジャンパー膝
ジャンパー膝はすねからひざのお皿につながる膝蓋腱(しつがいけん)に炎症が起きる疾患です。膝蓋腱炎とも呼ばれます。
[症状]
ジャンプや着地、ダッシュをしたときにひざのお皿の下あたりが痛むことがあります。
ジャンパー膝は同じくひざのお皿の下あたりが痛むオスグッド・シュラッター病と勘違いされやすいです。違いはオスグッド・シュラッター病がひざのお皿の下のすねとの付着部分に痛みが出やすいのに対し、ジャンパー膝はその少し上、ひざのお皿そのものの下部に痛みが出る傾向があります。
[原因]
主な原因はジャンプ、着地、ダッシュなど、スポーツにより繰り返しかかるひざへの衝撃です(飛び過ぎ、走り過ぎ=オーバーユース)。
ジャンパー膝は成長期特有の疾患であり、バレーボールやバスケットボールなど繰り返しジャンプするスポーツを行う10~15歳頃の子どもによく見られます。
■治療方法
ひざ・すねの疾患は症状に合わせて治療を進めていきます。まずは痛みが出る動作を控えることが大切です。
①安静
走る、ジャンプするなど、ひざ・すねの痛みの原因になる動作をやめて安静します。
比較的症状が軽いケースでは完全に動作を休止せず、動作を減らすだけで良い場合もあります。ただし、症状を改善するにはひざ・すねの痛みの原因になる動作を完全にやめることが望ましいです。
ひざ・すねにかかる負荷を軽減するため、症状に応じてサポーター(オスグッドバンドなど)を使うこともあります。
②鎮痛、消炎
痛みが強い場合は安静と共に鎮痛、消炎を行います。薬の種類は外用薬の湿布や内服薬の痛み止め・抗炎症薬などがあります。
③リハビリ(物理療法、運動療法)
安静後、ひざ・すねの状態を見ながらリハビリ(物理療法、運動療法)を行います。
物理療法では温熱療法、電気治療、超音波療法などを行い、ひざ・すねの症状の緩和と組織の回復を促す治療を進めていきます。
運動療法では膝関節の可動域を広げるストレッチやひざ周りの筋力を強化する筋肉トレーニングを主に行います。
④手術
上記の3つの疾患は成長期のひざ・すねの使い過ぎによる組織の炎症であり、手術が必要になるケースは少ないです。ただし、オスグッド・シュラッター病で軟骨がはがれてしまい痛みが強く、生活やスポーツに支障が出る場合は手術を検討します。
オスグッド・シュラッター病の手術でははがれ落ちた骨片を摘出し、ざらざらになった脛骨を削って平らにする処置を行います(※)。
(※)手術が必要な場合は提携病院をご紹介いたします。
【ひざ・すねの違和感や痛みがあるときは早めの受診を】
成長期の疾患は成長痛と勘違いされることが多く、放置しがちです。今回ご紹介した3つの疾患で手術が必要になるケースは少ないですが、重度に進行すると腱が損傷・部分断裂するなど、重篤な症状をひき起こす場合もあります。
ひざ・すねの違和感や痛みがあるときは自己判断で放置せず、早めに整形外科で診察を受けましょう。