認知症の中でもっとも多い割合いを占めるのが「アルツハイマー型認知症」です。アルツハイマーは認知症の約7割近くを占めます(2位は血管性認知症、3位はレビー小体型認知症)(※)。
どなたも年齢を重ねれば、加齢による物忘れは起こります。加齢による物忘れが脳の生理的な老化によって起こるのに対し、アルツハイマー型認知症はアミロイドという物質が脳に沈着し脳の神経細胞が減り、脳が委縮して小さくなることで発症します。
当院では、脳の萎縮度を調べられる高性能MRI検査「VSRAD(ブイエスラド)」を行っています。
今回は、早期アルツハイマー型認知症診断支援システム「VSRAD」についてご紹介します。
機能障害への対応」朝田隆(2013)より引用。
目次
■認知症は早期発見・早期治療が大切
◎早期発見・早期治療で末期の認知症への進行を防ぎやすくなります
アルツハイマー型や血管性、レビー小体型など、認知症にはさまざまなタイプがあります。タイプの違いはあれど、認知症は早期発見・早期治療が大切です。
早い段階で認知症を発見できれば、治療薬の服薬により認知症の進行を抑えやすくなります。認知症の早期発見・早期治療により、大きな介護が必要な末期の認知症にならずに初期・中期の状態を維持しながら人生を全うすることも可能です。
■VSRAD(早期アルツハイマー型認知症診断支援システム)のご紹介
◎MRIによる脳の画像診断「VSRAD」でアルツハイマー型認知症の早期発見につながります
VSRAD(ブイエスラド)とは、高性能MRIを用いて行う脳の画像診断です。VSRADによる検査を行うことで、脳の萎縮度を診断します。
{脳の海馬・海馬傍回が委縮しているかどうかを確認します}
海馬(かいば)は記憶をつかさどる脳の部位であり、海馬傍回(かいばぼうかい)は海馬の周辺領域です。海馬や海馬傍回が委縮している場合はアルツハイマー型認知症の可能性があります。
<アルツハイマー型認知症の可能性がある脳の萎縮>
・側頭葉の内側にある海馬の萎縮
・海馬傍回の萎縮
■アルツハイマーの初期症状
◎記憶障害、物盗られ妄想、作話など、さまざまな症状が現れ始めます
アルツハイマーの初期症状には以下のようなものがあります。初期では主に記憶障害が起こるほか、被害妄想、作話(うそ、作り話)、物事への無関心が見られます。
≪記憶障害≫
・少し前のことや出来事を忘れてしまう、覚えていない
・何度も同じことを言う
≪被害妄想≫
・「財布のお金が少なくなっている」「大事な物を家族に盗られた」などの物盗られ妄想
・「妻(夫)が浮気している」「ほかの男性(女性)と密会している」などの嫉妬妄想
・「家族に捨てられる」「自分は必要とされていない」などの見捨てられ妄想
≪作話(うそ、作り話)≫
・うそや作り話をする(物忘れによる失敗を隠そうとして、うそや作り話をする)
≪物事への無関心≫
・身だしなみを気にしなくなる
・趣味や日課をしなくなる
■アルツイハイマー型認知症を早期発見するためには
◎VSRADによる脳の萎縮度検査に加え、症状や経過を見た上で適切に診断することが大切
高性能MRIを用いたVSRAD検査を行うことで、脳の萎縮度を確認できます。ただし、アルツハイマー以外の原因でも脳は委縮する場合があるため、脳が委縮しているからと言って必ずしもアルツハイマー型認知症とは断定できません。
アルツハイマー型認知症がどうかを見極めるにはVSRAD検査に加え、医師による診察を行い、患者様の症状や経過を見た上で適切に診断することが大切です。
<アルツハイマー型認知症の検査・診察の内容>
・高性能MRIを用いたVSRADによる脳の萎縮度検査
・医師による口頭での質問形式の診察
・長谷川式スケール検査(記憶力を評価するために行う質問形式の認知症検査)
■VSRADによる検査の概容・費用・注意点
①検査
VSRADによる検査ではMRIを用いて頭部の撮影を行います。装置の中で音がするため耳栓をつけていただきますが、検査で痛みを感じることはありません。ご安心ください。
検査時間はトータルで約20~30分です。正確な撮影をするために検査中は装置の中でじっとしていただきます(身体に力を入れる必要はありません)。
②費用
保険診療でVSRADによる検査を受けられます。保険(3割負担の場合)での検査費用は約5,000~6,000円です。
③注意点
VSRADは装置の中でじっとしていただくほかは、大きな注意点はありません。食事制限や服薬の制限もないため、検査当日に時間どおりにご来院いただければOKです。
なお、以下に当てはまる方はMRIを用いたVSRAD検査を受けられません。ご留意ください。
<金属類等はMRI撮影室に持ち込むことができません>
・心臓にペースメーカー等、装置が埋め込まれている方
・磁石を利用したシャントチューブや人工内耳等
(磁石を利用した入歯・インプラント・義眼等、取外し可能であれば検査可能)
・閉所恐怖症や末期の認知症によりMRI装置の中でじっとしていられない方
【ご家族・ご自身に物忘れなどの症状がある場合は当院までお気軽にご相談ください】
高性能MRIを用いたVSRAD検査、および、医師による診察(質問形式の診察)を受けることで、アルツハイマー型認知症の早期発見・早期治療につながります。
認知症の進行を抑え、末期にならないようにするには初期段階で認知症を発見し、早期に服薬治療を始めることが大切です。
「最近、物忘れがひどくなった」
「「お金を盗まれた」と疑っている」
「「浮気をしているんじゃないか」と疑っている」
「作り話をするようになった」
など、ご家族・ご自身に上記のような症状がある場合は当院までお気軽にご相談ください。ご来院時にはご家族・患者様のご同意を得た上でVSRAD検査、および、医師による診察を行い、アルツハイマー型認知症の診断を実施します。