「胃の痛みが続いている…」
「この胃痛は、もしかして、胃がん?」
世界でも有数のストレス社会として、国内外に知られる、日本。胃痛は、日本人の“国民病”とされています。
多くの方に見られる胃痛ですが、続く胃痛には要注意。
慢性的な胃の痛みがある場合は、胃がん(進行した胃がん)を含めた、何らかの胃の疾患が胃痛の原因となっている可能性も。
今回は、「胃痛で疑われる主な疾患」および「消化器の疾患を早期に発見するために大切な定期検査」について、ご紹介します。
目次
■胃痛で疑われる主な疾患
◎胃痛の原因は多種多様です
前回のブログでもご説明させていただきましたが、胃痛の原因は多種多様です。
以下に、胃痛で疑われる主な疾患(疾患が原因の胃痛の場合)を挙げてみました。7つと多いですが、シンプルにわかりやすくご説明しています。ご自身に当てはまる症状がないか、一つずつ、確認していきましょう。
≪胃痛で疑われる主な疾患≫
- ・慢性胃炎
- ・急性胃炎
- ・胃潰瘍
- ・十二指腸潰瘍
- ・逆流性食道炎
- ・胃がん
- ・機能性ディスペプシア
①慢性胃炎
慢性胃炎とは、慢性的に、胃に炎症が起きている状態です。慢性的に胃の内壁の粘膜が萎縮しがちな状態になるため、萎縮性胃炎とも呼ばれます。
慢性胃炎(萎縮性胃炎)になると、慢性的な胃の痛み、胃のむかつき、吐き気、膨満感などの症状を伴います。
[慢性胃炎の主な原因]
疾患によるもの
- ・ピロリ菌の胃への感染
- ・急性胃炎の慢性化
- ・サイトメガロウイルスの胃への感染
- ・自己免疫性胃炎(A型)
- ・クローン病
日常生活の要因によるもの
- ・消炎鎮痛剤(痛み止め)の長期服用
- ・刺激が強い飲食物の常飲・常食(アルコール、コーヒー、香辛料、酢など)
- ・塩分過多の飲食物の常飲・常食
- ・喫煙
- ・ストレス
- ・過労
- ・睡眠不足
- ・不規則な食生活(食べる時間が決まっていない、寝る直前の暴飲暴食、多すぎる間食など)
②急性胃炎
急性胃炎とは、急激に起きる胃の炎症です。
急性胃炎では、急激な胃の痛み、胃のむかつき、吐き気、膨満感などの症状を伴います。ケースによっては、吐血、下血が起きる場合も。
[急性胃炎の主な原因]
疾患によるもの
- ・ピロリ菌の胃への感染
- ・細菌の胃への感染
- ・アレルギー性胃炎
- ・急性化膿性胃炎
- ・インフルエンザなどの感染症
日常生活の要因によるもの
- ・暴飲暴食
- ・刺激が強い飲食物の常食・常飲(アルコール、コーヒー、香辛料など)
- ・医薬品の服用
- ・化学的毒物の誤飲
- ・放射線
- ・寄生虫
- ・食中毒
- ・ストレス
- ・過労
- ・睡眠不足
③胃潰瘍
胃潰瘍とは、胃の内壁の粘膜に潰瘍(かいよう:組織が深くえぐられた状態)ができる疾患です。
胃潰瘍になると、空腹時・食後の胃の痛み、胃のむかつき、胃もたれ、げっぷ、吐き気、食欲不振などの症状を伴います。ケースによっては、吐血、下血が起きる場合も。タールのような黒い便が出たり、胃の潰瘍部分からの出血による貧血、体重減少、背中・腰の痛みなどが見られることもあります。
[胃潰瘍の主な原因]
疾患によるもの
- ・ピロリ菌の胃への感染
日常生活の要因によるもの
- ・消炎鎮痛剤(痛み止め)の長期服用
- ・刺激が強い飲食物の常飲・常食(アルコール、コーヒー、香辛料など)
- ・塩分過多の飲食物の常飲・常食
- ・喫煙
- ・ストレス
- ・不規則な食生活(食べる時間が決まっていない、寝る直前の暴飲暴食、多すぎる間食など)
④十二指腸潰瘍
十二指腸潰瘍とは、胃の右側(出口側)に位置する十二指腸の内壁の粘膜に潰瘍ができる疾患です。
十二指腸潰瘍になると、空腹時の十二指腸の痛み、吐き気などの症状を伴います。ケースによっては、吐血、下血が起きる場合も。タールのような黒い便が出たり、十二指腸の潰瘍部分からの出血による貧血、体重減少、背中・腰の痛みなどが見られることもあります。
[十二指腸潰瘍の主な原因]
疾患によるもの
- ・ピロリ菌の胃への感染
日常生活の要因によるもの
- ・消炎鎮痛剤(痛み止め)の長期服用
- ・刺激が強い飲食物の常飲・常食(アルコール、コーヒー、香辛料など)
- ・塩分過多の飲食物の常飲・常食
- ・喫煙
- ・ストレス
- ・過労
- ・睡眠不足
- ・不規則な食生活(食べる時間が決まっていない、寝る直前の暴飲暴食、多すぎる間食など)
⑤逆流性食道炎
逆流性食道炎とは、胃の上にある食道に胃酸が逆流してしまい、食道の炎症を起こす疾患です。
逆流性食道炎になると、胸やけ、胃酸の逆流による酸っぱいげっぷ(=呑酸:どんさん)、吐き気などの症状を伴います。ケースによっては、胸の痛み、声がれ、のどの違和感、咳、めまいが起きる場合も。
[逆流性食道炎の主な原因]
疾患・疾患の治療によるもの
- ・食道裂孔ヘルニア(横隔膜が裂けてできた穴から、胃の一部が飛び出してしまう疾患)
- ・高血圧・喘息・心臓疾患の治療薬の服用による副作用
- ・ピロリ菌除菌後の副作用
治療後の副作用による逆流性食道炎の多くは、一時的です。制酸剤の服用により、ほとんどのケースにおいて、治療後の副作用による逆流性食道炎の症状は治まります。
日常生活の要因によるもの
- ・加齢による胃の機能低下
- ・猫背による胃の圧迫
- ・肥満による胃の圧迫
- ・食べすぎ(特に、脂肪やタンパク質が多い食事)
- ・アルコールの飲みすぎ
- ・刺激が強い飲料の飲みすぎ(コーヒー、炭酸飲料など)
- ・早食い
- ・ストレス
- ・喫煙
- ・不規則な食生活(食べる時間が決まっていない、寝る直前の暴飲暴食、多すぎる間食など)
⑥胃がん
胃がんとは、何らかの原因により、胃の粘膜組織ががん化する疾患です。
初期~中期の胃がんは、無症状のケースが多いです。ほとんどが無症状ですが、進行した胃がんでは、胃痛が起きる場合も。タールのような黒い便が出たり、胃粘膜からの出血による貧血、体重減少、脱力感などが見られることもあります。
[胃がんの主な原因]
疾患によるもの
- ・ピロリ菌の胃への感染
- ・慢性胃炎(萎縮性胃炎)
日常生活の要因によるもの
- ・刺激が強い飲食物の常飲・常食(アルコール、コーヒー、香辛料など)
- ・塩分過多の飲食物の常飲・常食
- ・野菜や果物の摂取不足
- ・喫煙
- ・ストレス
- ・過労
- ・睡眠不足
- ・不規則な食生活(食べる時間が決まっていない、寝る直前の暴飲暴食、多すぎる間食など)
⑦機能性ディスペプシア
機能性ディスペプシアとは、疾患など、明らかな要因が特定できず、何らかの原因により、胃の消化不良や胃の機能低下が起きている状態です。
機能性ディスペプシアになると、胃の痛み、胃の灼熱感、胸やけ、胃もたれ、げっぷ、吐き気などの症状を伴います。
[機能性ディスペプシアの主な原因]
消化器の機能異常によるもの
- ・胃の機能異常(食べ物が入ったとき、きちんと胃が膨らむ機能+消化した食べ物を十二指腸に送り出す機能の異常)
- ・胃・十二指腸の知覚過敏
- ・胃酸過多
- ・胃の形の異常
(瀑状胃:ばくじょうい=胃の上部が膨らんで垂れ下がり、食べた物が溜まりやすい
鉤状胃:こうじょうい=胃の下部のカーブが強く、食べた物が溜まりやすい、など)
疾患によるもの
- ・ピロリ菌の胃への感染
- ・細菌(主にサルモネラ菌など)の胃への感染
日常生活の要因によるもの
- ・刺激が強い飲食物の常飲・常食(アルコール、コーヒー、香辛料など)
- ・塩分過多の飲食物の常飲・常食
- ・喫煙
- ・ストレス
- ・過労
- ・睡眠不足
- ・不規則な食生活(食べる時間が決まっていない、寝る直前の暴飲暴食、多すぎる間食など)
⑧バレット食道
バレット食道とは、食道の粘膜である扁平上皮の下部が、胃の粘膜である円柱上皮に置き換わってしまった状態です。
バレット食道そのものは、特に症状をひき起こす訳ではありません。バレット食道自体は症状をひき起こしませんが、原因となる逆流性食道炎により、胸やけ・胸の痛み(特に夜間に胸が痛みやすい)・食道のヒリヒリ感・悪心などの症状が現れることがあります。
バレット食道になった粘膜(=円柱上皮)は食道がんにかかりやすいため、注意が必要です。
[バレット食道の主な原因]
- ・逆流性食道炎
【消化器の疾患は早期発見・早期治療が大切です】
胃痛で疑われる主な疾患をご紹介させていただきました。
胃が痛いとき、「これは胃がんだ」と即、胃がんを連想する方は、あまり多くはないかと思います。実際、初期~中期の胃がんの多くは無症状です。胃痛が出始める頃には、かなり重度にまで胃がんが進行している可能性も。
必ずしも、胃がんと関係があるとは限らない、胃痛。ただし、必ずしも胃がんとは限らないからと言って、慢性的な胃痛を放置するのはおすすめできません。
今回ご紹介したように、慢性胃炎、機能性ディスペプシアなど、何らかの疾患によって胃痛が生じるケースもあります。
胃がんを含め、消化器の疾患を悪化させないためには、定期的な検査が重要です。検査設備が整った医療機関で定期的に検査を受け、胃・十二指腸の状態をチェックすることで、消化器の疾患の早期発見・早期治療につなげやすくなります。
最近では、早期の胃がんや食道がんであれば、従来の外科手術(開胸や開腹手術)をしなくても内視鏡だけで治療できる時代になってきています。ぜひ一度検査に足を運んでみてください。
– 治まらない胃痛・腹痛がある方は、当院までご相談ください –
当院では、消化器内科の担当医による診療を行っています。消化器内科医の診療は、毎週木曜の午前中(9時~12時)です。
院内には、口から挿入する通常の胃カメラに加え、苦痛が少ない、鼻から入れる胃内視鏡を備えています。鼻から胃内視鏡を入れることで、胃カメラが苦手な方・嘔吐反射がある方も、ストレスを軽減した状態で検査をお受けいただけます。
なかなか治まらない胃痛・腹痛がある方は、当院までご相談ください。